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悪役令嬢プロデュース!(前)

サバナ大公国は、風光明媚な小国である。主な資源は第一次産業と、海外の金満家に焦点を当てた観光業だ。

国家元首はサバナ大公アマルート二世。その息子ベルン次期大公殿下が私の主人である。

私の名はガレル=グラマン。有り難いことに、ベルン様の侍従を勤めさせて頂いている。


我が主ベルン様の恋のお相手は、下級貴族の娘ハスカ嬢だ。

「私には畏れ多い事です。どうか他の、貴方に相応しい方にお声掛け下さい。」

これがハスカ嬢のお返事。ベルン様は気の毒にも、いつも振られている。

「ハスカ様もベルン様のこと好きっぽいのに。確かに大公妃とかめんどくさそうだけどね。」

とは我が妹にして王宮侍女リサの言である。

ベルン様に幸せになって頂きたい。

じれったい恋愛には恋のスパイスが必要である。

そこで私は考えた。

「だから私、思うんです。人生には、悪役令嬢が必要だってね。」


今日は海外からの来賓を招いてのパーティである。ベルン様はハスカ嬢を招待することに成功していた。

「バカ兄貴、本当にやるの?」

リサの口の悪さは誰に似たんだろうか。再教育が必要と思われる。

「勿論だ。ベルン様の御為、私は立派に悪役令嬢をプロデュースしてみせる!」

リサが溜め息をついた。

「安心しろ。既に候補は見付けてある。カナセ=アルテナ嬢だ。ほら、ちょうど今アルテナ卿に連れられて会場入りなさったぞ。身分、容姿、教養、立ち居振舞い。全てが悪役令嬢の名に相応しい。」

しかもカナセ嬢は、ベルン様と幼い頃から交流があると聞く。これ程ハスカ嬢の当て馬に相応しい方も居まい。

それに恐らくカナセ嬢は、ベルン様に想いを寄せておられる。私がベルン様のお側に控えているとき、彼女がよくチラチラとこちらを伺っているのには気付いていたのだ。

「よ、よりにもよってカナセ様……。兄貴が真正バカだって良くわかったわ。」

リサの言っている意味が良くわからないが、まぁいい。

悪役令嬢プロデュースド・バイ・私。実行あるのみである。


「カナセ様、パーティは楽しんでおられますか?」

早速カナセ様に話し掛けに行く。

通常侍従はパーティの裏方に撤するものである。私も例に漏れず、普段は招待客に話し掛けたりしない。カナセ嬢は職分を越えた私を無礼者と罵ることもできるのである。

ところが彼女は話し掛けたのが私とわかると、驚いた後ににっこりと微笑んでくださった。

なんてお優しい。だが悪役令嬢としては少しもの足りないな。

「カナセ様はいつ見ても完璧な淑女でいらっしゃる。本日も真にお美しい。まるで大輪の薔薇のようです。」

まぁ、と頬を染めるカナセ嬢。元々がきつ目の美人だが、照れると雰囲気がまるくなり、大変お可愛らしい。

そもそも私はふわふわした可愛い系のハスカ嬢より、女性的なスタイルのカナセ嬢の方が好みだが。ベルン様の女性の好みとは合わないようで、なによりである。

「今日は国外の賓客もいらっしゃって、外交的にも重要な場です。しかし本日ベルン様がお連れになったお嬢様は、こういった場には不馴れなご様子。カナセ様、どうかベルン様を助けて差し上げて下さい。」

カナセ嬢は顔を赤くした後、も、勿論ですわ!と気合い充分といった頼もしい返事をして下さった。

「私を頼ってくださいますのね。」

「貴女ほど、相応しい方はおりません。」

さぁ行くのです、カナセ嬢!そしてお二人を存分に邪魔してください!


ベルン様の所に挨拶に行かれたカナセ嬢は、早速ハスカ嬢に何か言っておられる。おぉ、お二人の間に割り込んだ。

一歩下がるハスカ嬢。並ぶベルン様とカナセ嬢。

(まこと)に絵になるお二人に、周りからも感嘆の溜め息が漏れる。

流石はカナセ嬢。見事な悪役令嬢っぷりに、プロデューサーの私も鼻が高うございますよ。

後編は6/26(金)更新予定です。

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