たまのぜいたく
たまのぜいたく
琴子は猫に嫌われる。
琴子は猫が大好き過ぎて、かまいすぎるので、嫌われる。
猫を飼っているのに、毎日、片思いだ。
撫でようとしたら、逃げられる。
呼んでも無視される。
寝姿を写真に納めようとすると、目を開けて威嚇される。
ただ、一日に一回だけ、寝の方から寄ってくる時間がある。
午後3時。
琴子のおやつタイムだ。
一度、コーヒー用のミルクポーションを差し出してみたら、夢中で舐め、それから味を占めて、毎日ねだる。
この時だけは、撫でようが抱こうが逃げられることがないので、
琴子は必ず毎日、ミルク入りコーヒーを飲む。
今日は、いただきもののバウムクーヘンがあるので、珍しく、おやつに甘いものも参入した。
コーヒーとバウムクーヘンを持ってテーブルにつくと、たまが走り寄ってきて、ニャン、と鳴く。
琴子がミルクポーションを差し出すと、必死に舐める。
琴子は思う存分、撫でくりまわす。
ふと、思いついて、バウムクーヘンを少しちぎってやる。
たまは、目を輝かして、カツカツと食べる。
食べ終えると、琴子に身を擦り寄せ、甘えた。
琴子は感動に、うち震えた。
たまが自分から、私に身を寄せるなんて…。
それから毎日、琴子の、おやつタイムには
コーヒーとミルクポーションとバウムクーヘンが欠かせないものになった。