月も星も
月も星も
きらきらと輝いて見えたんだ、あなたと初めて出会ったとき。世界が急に明るくなって僕はまぶしくて目をつぶった。目をつぶっても瞼の裏にあなたはもう焼き付いてしまって、僕は眠っている時まであなたを見つめている。
出来ることならあなたを小さく小さくして、僕とあなたしかいない暗いところに行きたいんだ。そしてそこであなたが死ぬまで一緒に生きる。あなたが死んだら僕もすぐに死ぬよ。あなたがいない世界なんて僕には必要ないから。
でも、それは満たされることのない欲望、口に出してはいけない夢。
だってあなたには旦那さんがいて二人は愛し合っているんだもの。だけど僕はあなたを世界一、誰よりも愛してる。それは確かなことだよ。何があっても、それは確かなことだよ。
「あら、この子、笑ったわ。もう目がみえるようになったのかしら」
「まだ産まれて一週間じゃないか。まだよく見えていないだろう」
「そんなことないと思うな。この子が産まれたとき、私たち、見つめあったもの」
そうだよ、僕はあなたを見つめて、あなたは僕を見つめて、世界は一瞬だけ二人だけのものになったよね。
「私、この子のためならなんだってできるわ。この子のためなら月も星も買ってあげるわ」
そんなものはいらないよ。僕はあなたがいてくれれば、それだけで生きていけるんだ。月も星もなくても大丈夫、僕の太陽はあなただけだから、ママ。
いつか僕が大きくなって、素直でいられなくなっても、誰かと結婚して子供ができても、生涯にたった一人、僕のママはあなただけだから。