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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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わからないじいちゃん

わからないじいちゃん

 じいちゃんは、すぐに何でも「わからんなあ」と言う。

「なお、これ、じいちゃんわからん」

 そして分からないことは全部私に聞いてくる。

「これこれ、スマホ。どうやって電池いれるんだ?」

「あれ? じいちゃん、いつスマホ買ったの?」

「これは美紗さんのだ」

「お母さんの!? だめだよ! 勝手にさわったら、またイモリを背中にいれられるよ!」

「ちょっと借りるだけだよ」

「だめだって! それにロックがかかってるし」

「鍵はどうやってあけるんだ?」

「だめだって!」

 じいちゃんは「わからん」「わからん」と言いながらスマホをいじくり回している。気配を感じて振り返ると、ドアのすきまからママが覗いている。氷の女王のような冷たい目をしている。あまりの迫力にひるんで部屋のすみに逃げた。じいちゃんはなんにも気づかず「わからん」「わからん」といいつづけている。

 お母さんは足音も立てずにじいちゃんの背後に歩み寄った。ぐいっとじいちゃんの襟を引っ張ると背中に手を突っ込んだ。

「うひゃほほう!」

 冷え性のお母さんの手はびっくりするほど冷たい。じいちゃんは慌てて振り返ってスマホを背中に隠した。

「おとうさん? なにしてらっしゃるの?」

「あ、いや、その……」

「後ろに隠してらっしゃるのはなあに?」

「いやそのこれは」

 お母さんはじいちゃんの背中に回り込んでスマホを取り上げた。

「あら、私のスマホ」

「あ、いやこれは」

「おとうさんったら、いたずらこぞうなんだから。ほほほほ」

「ははははは」

「廊下にたってなさい!」

「はいい!」

 廊下に立たされたじいちゃんの隣に立って話しかけてみた。

「しかしさあ。いいかげんお母さんからかうのやめたら」

「いやあ、やめられんなあ」

「なんで」

「わからんなあ」

「私はじいちゃんがドMだからだと思うよ」

「そうかなあ。じいちゃんにはわからんよ」

 じいちゃんはぜったいわかってる。

 だけどまあ、お母さんだってわかってるのだし、仲いいんだから、いっか。

「なにを考え込んでいるんだ?」

「さあ、わかんないな」

「おまえはじいちゃんに似とるなあ」

「さあ、わかんないな」

 じいちゃんは「わからんわからん」と言いながら嬉しそうに立っている。

 すくなくとも私はドMじゃないぞとおもいつつ立っている。じ、じいちゃんに付き合ってるだけなんだから。とツンデレなことを思いながら。

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