ワンタンタンタンメン
ワンタンタンタンメン
「新しい早口言葉を考えようよ」
「え……いいけど……」
「僕はねえ、ワンタンタンタンメントタンメントタンスイカブツ」
「それ、べつに言いにくくないよ。カタカナで書いたら読みにくいけど」
「え? そう? じゃあ、ワンタンタンタンメントタンメン、ダンダンワンタントタンメントタンタンメンニナッタンダッタ」
「なにそれ、意味不明」
「早口言葉なんかみんな意味不明だろ。どじょうにょろにょろみにょろにょろあわせてにょろにょろむにょろにょろ、とか」
「そんなことないよ。二条の洞院 西へ入る にわとり屋の2階に にわとり2羽いて 西向いて逃げた、とか」
「それだって意味不明じゃん。にわとり屋なんて京都の二条にある?」
「わかんないよ、そんなこと」
「だからさ、僕の考えた早口言葉、いいと思うんだ」
「ワンタンタンタンメン?」
「そう。ワンタンタンタンメントワンタンタンメンダンダンタンタンメンニ……」
「待って、それ、さっきと違うよ。さっきは、ワンタンタンタンメントタンメンダンダント……」
「え、違うって。ワンタンタンタンメンダンダンタンメンニ……」
「違うよ、タンメンタンメンワンタンメン…」
「全然違うって、タンメ……」
「おーい、お前たち、大変だあ」
「たいへんって、なにが?」
「住職が渋滞で重機に轢かれて十分な処置を拒否して重体だ」
「ええ? 住職が重機を処置して……」
「違う! 重機が渋滞で住職を……」
「それ、さっきと違うよ」
「なんだって?」
「それに、住職ってだれ?」
「……お前たちこそ、だれだ?」
「この子そこのカドの小物屋の桃子の息子」
「え?」
「この子は箱のヒモで古い布を縫いそこなったヒモ屋のとこの子」
「……全然知らん子並んでたんで、なんでか、なんだかんだ、ながなが噛みそうな長台詞で嘆いてしまった。長居は無用!」
「行ったか、タンタンと語る旦那、ワンタンタンタンメントタンタンメンの啖呵を教えたかった」
「お後がよろしいようで」




