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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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恐怖の強風

恐怖の強風

 かずくんのおじいちゃんはすごく強い。

 空手、柔道、剣道、どれも強い。

 頭もいいし、かっこいい。

 かずくんは自慢に思っているけれど、怖いときもある。


 かずくんは泣き虫でこわいものがたくさんある。

 虫も、犬も、雷も、暗いところも。

 おじいちゃんは、かずくんに強くなってほしくて虫や、犬や、雷や、暗いところを怖がっているかずくんの背中を押す。かずくんはますます怖くなって泣いてしまう。

 おじいちゃんは「やれやれ」と言ってため息をつく。


 おじいちゃんのため息を聞いていて、かずくんはふと考えた。


「おじいちゃんは何が怖いの?」


 おじいちゃんは胸を張った。


「何も怖いものはないぞ」


「おばけも?」


「怖くない」


「ニンジンも?」


「怖くない」


「プールも?」


「怖くない」


 かずくんは、なんだかがっかりした。自分だけが怖がりで、かっこ悪い。かずくんはおじいちゃんと遊びに行くのが嫌になった。


 台風がきた。かずくんは怖くて布団の中に隠れた。おじいちゃんがかずくんの布団をはいだ。


「なんだ、かずはまた怖がって」


 かずくんは泣きべそをかいた。


「おじいちゃんは台風が怖くないの?」


「ぜんぜん怖くなんかないぞ」


「じゃあ、外に出られる?」


 おじいちゃんは「うっ」と言って黙った。


「やっぱり、おじいちゃんも台風が怖いの?」


「怖くなんかない! そこで見ておきなさい!」


 そう言っておじいちゃんは外へ出た。かずくんは窓から外を見ていた。

 おじいちゃんは庭で仁王立ちになって胸を張っている。片手で風に荒らされている髪を押さえている。


「すごいや、おじいちゃん!」


 かずくんが笑顔で両手をふると、おじいちゃんもバンザイして手をふった。

 その時、すごく強い風が吹いて、おじいちゃんの髪の毛がぴゅーっと飛んでいった。

 おじいちゃんの頭がつるっと光った。おじいちゃんは飛んでいく髪の毛をあわてて追いかけていった。かずくんはぽかんと口を開けて見ていた。


 やっと帰ってきたおじいちゃんは全身ずぶ濡れで、くちゃくちゃになった髪の毛をかぶっていた。おじいちゃんはかずくんと目が合うと、


「台風は怖いな」


とぽつりと言った。

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