クリスマスパワースポットツアー
クリスマスパワースポットツアー
「え、本日はぁ、鶴バスをご利用いただきましてぇ、ありがとうございまぁす。
当バスはぁ、クリスマス限定のぉ、パワースポットを巡るミステリーツアーでぇございまぁす。
目的地はぁ、どなたさまにも、ヒミツでぇございまぁす。
それでは、出発いたしまぁす。
え、みなさまぁ、これから右手に見えてまいりますのがぁ、恋人たちの聖地、恋人岬でぇございまぁす。
岬の突端にはぁ、大きなベルがありぃ、恋人と二人でならすとぉ、永遠に結ばれると言われてぇおりまぁす」
「ガイドさん、ガイドさん」
「はい、加藤さま。なんでございましょう」
「永遠に結ばれるって言ったのはだれなの?」
「はい。恋人岬観光協会でぇございまぁす」
「……あ、ああ、そう」
「あ、次にぃ左手に見えますのがぁ、恋人たちの聖地、福岡タワーでぇございまぁす。
このタワーの最上階、展望フロアに敷いてあるタイルのなかにはぁ、ひとつだけハート型のタイルがぁ隠れておりまぁす。
恋人といっしょにぃ、ハートのタイルを見つけると永遠に結ばれると言われてぇおりまぁす」
「ガイドさん、ガイドさん」
「はい、加藤さま。なんでございましょう」
「永遠に結ばれるって言ったのはだれなの?」
「はい。福岡タワー維持管理課の会議でぇ決裁されたのでぇございまぁす」
「……そうだよねえ」
「みなさまぁ、バスはこれから都市高速道路を通りぃ太宰府へとぉむかいまぁす」
「太宰府天満宮ですか?」
「いいえぇ、加藤さま。それではミステリーツアーになりませぇん。到着までもうしばらく、お待ちくださぁい」
「え、皆様ぁ、行く手に見えてまいりましたのはぁ、竈門神社でぇございまぁす。縁結びの神社と言われ、恋人といっしょにぃお詣りするとぉ……」
「ガイドさん、ガイドさん」
「はい、加藤さま。なんでございましょう」
「どうせ、永遠に結ばれるんでしよ?」
「残念、ハズレでございまぁす。この神社でお詣りすると、結婚式の割引クーポン券がぁもらえるのでぇす」
「クーポン券……」
「近年は神前結婚式がはやりのようでございまぁす。え、それではぁ、バスは次のパワースポットへ……」
「ガイドさん、ガイドさん」
「はい、加藤さま。なんでございましょう」
「なんで恋愛関係のパワースポットばっかりなの?」
「クリスマスでございますからぁ。加藤さまぁ、後ろをぉごらんくださぁい」
「後ろって……、うわあ」
「お客様はみなさま恋人同士でぇございまぁす。加藤さまをのぞいて」
「うわあ、みんな神社のクーポン券をもらってるぅ、持ってないのは……」
「加藤さま、ご安心ください。わたくしも、運転士も、クーポン券はもらっておりませぇん」
「おぉ、同士がいた! 結婚式に縁がないさびしい同士が!」
「残念でございまぁす。加藤さまの同士にはなれないようでぇす」
「なんで? 結婚式のクーポン券、いらないんでしょ?」
「わたくしとぉ運転士はぁ、先月、結婚式をぉすませたばかりでぇございまぁす」
「新婚さんかよ!」
「竈門神社のクーポン券をぉ使わせてぇいただきました」
「おります! もうひとりぼっちにたえられない!」
「加藤さま、本日はぁ鶴バスのご利用、ありがとうございました。またのご乗車をおまちしていまぁす」
「もう乗らないよ!!」