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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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冬の手紙

冬の手紙

拝啓


 お元気でお過ごしでしょうか。


 海辺ではじめたカフェも早三年目を迎えました。細々とですがなんとか毎日お店を開けることができています。

 コーヒーも最近は誉めていただけることが多く、貴女の味に近づいたと言ってくださるお客様もあります。


 貴女がイタリアに行ってしまった時には寂しさも相まって、ずいぶん恨んだものでした。二人でおばあちゃんになるまで一緒にやっていこうね、と約束したのにと。

 けれど時間が経つにつれて貴女が追いかける夢がどんなにきらめいていたか分かったような気がします。


 貴女が淹れたコーヒーは他のどんなコーヒーにもない優しさがあふれていました。立ち上る湯気は甘さすら感じられるほど豊かな香りでした。あの味をもう一度感じたくて試行錯誤しています。もっと美味しく、もっと香り高く。貴女はずっとそう思っていたのですね。


 雑誌で貴女がバリスタのコンテストで入賞したと知りました。おめでとう。今は素直にそう思います。

 貴女なら三位なんて勝ちじゃないと、また自分に厳しいことを言うんじゃないかしら。でも世界で三番目に美味しいコーヒーを淹れられるってすごいことですよ。

 それに、まだまだ目指せる上があるって素晴らしいこと。貴女ならどこまでも上り続けていけると信じています。


 でも、一番上にいってしまったら貴女はどうするかしら。また次の夢を見つけるのでしょうか。

 きっとそうでしょうね。貴女はいつも未来をみているもの。


 貴女の夢を引き継いで、私はこのカフェを続けていきます。おばあちゃんになるまで。そして貴女が夢をぜんぶ叶えて帰ってくる日を待っています。


 海のそばから  亜沙美

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