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コップから溢れるもの
コップから溢れるもの
泣けば泣くほどもらえると知って太郎は泣く。
あれも欲しい、これも欲しい、あれもしてくれ、これもしてくれ。
泣けば泣くほど太郎は満たされる。
大きくなって、大人になって、泣きすぎた太郎の涙は枯れた。
けれど、あれも欲しい、これも欲しい、あれもしてくれ、これもしてくれ。
太郎はだだをこね続ける。両手を振り回し、足を踏み鳴らし、よこせ、よこせ、とねだり続ける。
俺が欲しいものをよこせ、お前が持っているものをよこせ、お前自身をよこせ、お前はもう俺のものだ。俺の言うとおりに、俺のしたいように生きろ。
そう言って地団駄を踏む。
余るほど手にいれたものは、コップから溢れる水のようにひたひたと流れ去る。太郎はもっと欲しくなる。もっと、もっと、もっとだ!
そうして、太郎は泣き続ける。




