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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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眠れぬ夜のたわむれに

眠れぬ夜のたわむれに

午前0時、由美は皿に乗った料理を三角コーナーに捨てる。


三角コーナー。

なんて変な名前かしら。三角で、コーナーだなんて。用途をちっとも表さない。


三角で、コーナー。形だけ。


由美は三角コーナーに、サワラの香草ワイン蒸しを捨てる。キャベツとベーコンのソテーを捨てる。ニンジンとツナのサラダを捨てる。コーンポタージュスープを捨てる。夫の好物たち。


三角コーナーに臭いが染み付く。魚の臭い、油の、青菜の、クリームの臭い。臭いが染み付き、腐臭になる。


生ゴミを処分しても、三角コーナーから異臭がする。生ゴミを取り去っても臭いは残る。魚の、青菜の、クリームの臭いが。


臭いが由美をいらだたせる。


大量の消臭剤を三角コーナーにふりかける。何度も何度もふりかける。三角コーナーはただ黙って、そこにあるだけだ。


そしてどんなにふりかけても、腐臭は消えない。


由美はバケツに水を張り、三角コーナーを水底に沈める。


浮かび上がろうとするのを、両手で押さえつけて沈める。


何度も何度も沈める。


水に閉じ込められた三角コーナーから、やっと腐臭が消える。


由美は満足して手を離す。


三角コーナーはゆっくりと、うつぶせたまま水面に浮かぶ。





「なんだ、起きてたのか。寝てていいのに」





夫の声に、由美は笑顔で振り替える。


「あら、お帰りなさい。お食事は?」


「いい。すませてきた」


「そう、お風呂は? すませた?」


「……いい。寝る」


夫が立っていた場所に、知らないシャンプーの臭いが残る。


由美は三角コーナーをつまみ上げてシンクにもどすと、


消臭剤をたっぷり振りかけた。

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