表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
774/888

書を読む

書を読む

 大人になってから字の練習を始めた。書道と呼べるほどきちんとしたものではない。仕事で使う何百文字だけを繰り返し練習している。

 それだけでも見えてくるものはあり、「繰り返す」ということのすごさを実感した。


 文字には人柄が出る。自分の文字を見てつくづく思う。ただ、文字を見て得たイメージを言語化することは難しい。文字は意味を持つがゆえに、別の意味を重ねにくいのかもしれない。


 美術館に書を見に行く機会も増えた。難しい崩し字などもちろん読めないのだが、それでも書を眺めるのが楽しい。

 書には色彩がある。筆が産み出す線の一本一本が美しい世界を産み出す。すばらしい書に出会えば、墨色の中に虹色の光を見つけることができる。線の流れは音楽のように体のすみずみまで響き渡る。読むことができないがゆえに深く感じることができる。美しい表装に包まれた生き物のような躍動感を。


 文字は練習しないとすぐに元の下手に戻ってしまう。一日怠れば一日分、我が怠惰を文字の中に見ることになる。それはなかなかに眉をしかめたくなるものだ。怠惰は醜いものだと思い知らされる。けれどそんな醜さも自分の中にあると知ることができるのも書の面白さなのかもしれない。


 実は一週間、練習をサボっている。さて、こんどはどんな自分が見えるだろうか。一種楽しみでもあるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ