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夏休み
夏休み
小学校のプールが10時から4時まで開放されることを知った真奈美は、毎日ラジオ体操が終わると朝御飯を食べて宿題を済ませて水着を掴んで家を飛び出す。
お昼ご飯も食べずに泳ぎ続けて、夕方ふにゃふにゃにふやけた指で髪を拭きながら、帰る。
真奈美は大きくなったら人魚になるんだと決めている。そのためには泳ぎの腕を磨かないといけない。
昼食抜きだからお腹がすごく減る。何度もお代わりをして動けなくなるまで食べ続けて、食後はごろんと寝転がってしまう。
昼間の暑さがお日様と一緒に山の向こうに消えて、涼しい風が吹いて、真奈美はうとうとする。窓から差し込む夕暮れの、金色みたいな光のなかでまどろんでいると、海の底にたゆたっているみたいな気持ちになる。
早く人魚になりたいな。真奈美はゆっくりと海の底に降りていくような気持ちでまぶたを閉じた。




