返らないメール
返らないメール
かずくんはラインを教えてくれない。
「俺、スマホじゃないから」
確かにかずくんは二つに折れるケータイを使ってる。でもケータイでもラインはできるんだよ、と言ってみた。
「めんどくさい」
それで会話はおしまい。けっこう勇気出して聞いたのにな。がっかりしてたら、かずくんが同情してくれたみたいだ。
「メールならいいけど」
大喜びでメアドを交換した。
ドキドキしながらメールを送った。
待って、待って、待って……いくら待ってもメールが返ってこない。
「あ、メールチェック忘れてた」
ちょっと泣きそうになった。かずくんは同情してくれたみたいだ。
「次はちゃんと読む」
メールを送った。待って、待って、待って……メールはこない。
「読んだぞ。俺はオムライスが好き」
顔を合わせた時に返事をくれるんじゃメールの意味がない。
「また、泣きそうか?」
全然泣きそうにはならなかった。
「顔を見て話せてうれしいよ」
かずくんはちょっと赤くなったみたいだった。
直接話せばいいんだけれど、でもまた、かずくんにメールしよう。そしたらかずくんは返事をくれる。私に会いに来てくれる。メールをもらうよりずっと素敵。メールがかずくんを私に届けてくれる。
今日のメールにはハートマークをつけよう。かずくんはなんて言ってくれるだろう。また赤くなるかな。
メールが届かないと分かっていても愛しくて、スマホを握ったままベッドに入った。
おやすみ、かずくん。また明日。




