表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
672/888

鼻恋

鼻恋

「鼻毛出てるよ」


 気軽にそう言った彼女に、僕は恋をしてしまった。

 そして、押して押して押しまくって、ようやく恋人になってもらい、

 押して押して押しまくって、ようやく結婚してもらい、数十年が過ぎた。

 その間いろいろあったけど、彼女はいつでもはっきりと言ってくれる。


「股間のジッパー開いてるよ」


「口臭ひどいよ」


「アホ毛立ってるよ」


「加齢臭でてきたね」


 彼女はほんとうになんでもズバズバと切って捨てるように注意をくれる。僕は彼女と一緒に居なかったらどれだけ間抜けヅラをさらして生きていたか分かったもんじゃない。

 そんな彼女も年をとり、だんだんと色々なことを忘れるようになってしまった。僕の鼻毛の事も飛び出たお腹の事も、もう気にもならないようで僕が見えているのかいないのか、いつもぼうっとしていた。


「おハゲになったわね」


 気軽にそう言った彼女は、僕を置いて逝ってしまった。彼女が僕にくれた最期の言葉を忘れないために、僕は毎朝頭をピカピカに磨く。あちらへ行った時に彼女が一目で僕と分かるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ