気が合う
気が合う
そう言えば柔軟剤が切れかけていたなと思いだし、香苗はドラッグストアに向かった。日が暮れた町中に煌々と明るい建物に引かれるように入っていく。
「いらっしゃいませー」
挨拶が店内のあちらこちらから木霊のように飛んでくる。深山幽谷気分を味わいつつカゴをとってぶらぶら歩く。
まずはお買い得品のコーナーを冷やかす。商品入れ換えで棚から押し出されたもろもろを眺める。さすがに売れ残り、定番商品はひとつもなく、世の中には見たこともないメーカーが山のようにあることを知る。その中から『卵白リンス』なるものをカゴに入れる。平安からの伝統製法だそうだ。
お気に入りの入浴剤を選ぼうと思ったが、隣の商品にはオマケに一回分の洗濯石鹸がついている。そちらを選ぶ。
お菓子の棚に季節商品が出ていた。塩レモン飴をチョイスしてみる。ついでに手でとけないチョコレートも。
あれもこれもと棚から棚をさ迷い歩き、レジにたどり着いた時には、もろもろでカゴに山積みになっていた。
「五千九百八十二円です」
ぐらりとめまいを感じたが、なんとか踏みとどまった。ビニル袋に詰められていくもろもろを睨む。
あれもこれもそれも必要なかった、無駄に買っちゃったぞ。
後悔して足取り重く家に帰った。
目当ての柔軟剤を買い忘れたのに気づいたのは洗濯機を回しはじめてからだった。




