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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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夢の食卓

夢の食卓

團伊玖磨、だんいくま

という指揮者。

作曲者。

作者。





『舌の上の散歩道』


私の文章の出発点が團伊玖磨のエッセイだ。

『ぞうさん』や『やぎさんゆうびん』で彼の名前より先に曲を知って歌っていた。

『白やぎさんからお手紙ついた』

文章の上達には文章上手の文をなぞるのが一番だ、と聞いた。

文章上手とはだれか?

なぜかその時私に与えられた答えは團伊玖磨だった。

『黒山羊さんたら読まずに食べた』

ひたすら読み、ひたすら写した。

そしてそのうまそうな描写によだれをたらした。

『しかたがないからお手紙かいた』

トナカイの肉、こんぺいとう、カツ丼。團伊玖磨はとにかく食べる。

『さっきの手紙のご用事なあに』

いかにもうまそうな。いかにも幸せな満腹。腹を満たすということの幸せを余すところなく書いてある。

太る、ということを忌避する世界など知らない食欲と口福。

『黒山羊さんからお手紙ついた』

その口福をなぞりたくて、その口福を味わいたくて東に行き、西に旅した。

『白やぎさんたら読まずに食べた』

トナカイのステーキに憧れ、北の氷の地で食べた。春の恵みを摘んで食べた。したたる夏をすすり飲んだ。秋の実りをいただき次の季節を心待にした。

『しかたがないからお手紙かいた』

今日、憧れた最後の一品、Tボーンステーキを食べた。青空、ワイン、夢の食卓。

『さっきの手紙のご用事なあに』

望む食卓には皆ついた。けれど。

『白やぎさんからお手紙ついた』

人生は続く。食卓は日々重なっていく。

『黒山羊さんたら読まずに食べた』

しかたがないからお手紙食べずにお肉を食べて。

明日も元気にがんばるか。

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