かお
かお
小さい頃は行くところどこでも「お父さんにそっくりねえ」って言われた。嫌だった。父は野球のホームベースみたいな輪郭で海苔みたいな眉毛で鼻の穴が前を向いていてタラコ唇だった。自分が美人じゃないのは知ってたけど、父に似ているなんて何の罰かと我が身を嘆いた。
二十歳になって成人式を迎える前に美容整形をした。
大きすぎるエラを削り鼻を高く、まずはそこまで。一度に顔中いじるのは金額的に無理だった。それでもだいぶ変わるはずだ。
それにしてもどうして私は母に似なかったのだろう。母は美人だと誰もが誉めてくれる。人形のように整ってる。すっとした鼻とか滑らかな輪郭とか、唇はどちらかというと分厚いけれどセクシーとも言えた。そこだけは私も似たのかもしれない。唇は整形しないでおこうと思う。
手術が終わって目を開く。世界が一変して光輝いたり、はしなかった。顔はあちこち痛いし、麻酔が抜けきっていないのか手足に力が入らない。しばらくは口を開けられないから喉に管が通っているし、包帯で顔が痒い。
でもそんなこと、なんてことない。やっと父の顔から逃げられるのだ。どんな顔になっているだろう。やはり作り物みたいに見えるだろうか。整形だとまるわかりだとしたら悲しい。でもいいんだ、たいして美人になってなくても作り物って感じでも。私はワクワクと胸踊らせて包帯が外れる日を待った。
とうとうその日が来た。目をつぶり包帯が取られていくさらさらした感触に胸が高鳴っていく。私はゆっくりと目を開けた。私は新しい私に出会うんだ。どんな顔になっているだろう!
鏡の中には母にそっくりになった私がいた。




