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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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どーおでもいい日記

どーおでもいい日記

保険が好きだ。

 健康保険とかではなく、生命保険が好きだ。 

 私のブログを「病弱日記」と題するほど私は病気をしてきた。入院なんてへのかっぱ。救急車の常連さん。そんな私の心の友が「保険」だ。

「もしもの時に助けになります」そういう保険勧誘員さんに進められて自分で入った一番初めが三十歳。記念加入くらいのつもりだったし、相手は仕事でお世話になっている方だったので義理もあった。すすめられるまま必要最低限の安い保険に入った。

 それがまあ、その後病気することすること。かけ金なんて鼻息で吹き飛ぶほどの給付金をいただいた。健康な方に支えられて私は今、生きています。 

 今日もまた新しい保険に加入した。怪我や認知症に備える保険、月二千円程度。安い。

 近々、怪我をする気がするし、認知症なんてなるに決まってる。だって私の人生、病弱だもの。 私なんかは進められればホイホイ保険に加入するけれど、病気なんかしたことない人は考えもしないだろう、保健に助けられる日が来ることなんて。それはなんと幸せな人生だろう。しかしそこには不安がつきまとうのだ。けれど彼らはそれを知らない。ふふふふふ、私は知っている。 

 けれど多くの人は生涯、ろくに病気もせず保険をかけ捨てて生きていくのだ。なんとも羨ましい限りだが。そんな健康な人たちにとって、保健なんてただのまやかし、金食い虫、後から考えたら無駄な出費だったわけで。しかしそれは後だしじゃんけん。人生何が起きるか一寸先は奈落の果てだってことも多々ある。「もしも」という幻の日のためにいくらの金なら使えるか。それが高いか低いか分かるのは残念な時なのだ。

 私は周囲の人に保険をすすめはしない。みんな概ね健康に過ごしていくだろうからだ(うちの家族は皆病弱なので別だが) 。しかしそれはただのまやかしなのではないか?と常々思っている。けれど私は保険をすすめはしない。だって、人間関係が壊れかねないから。

 世の中の多くの人は自分が健康であるという今の姿に幻想を持っていて先のことを見ていないと思う。病弱な私は。明日、脳梗塞で倒れるとか、今日、腸閉塞で救急車を呼ぶとか、階段から転がり落ちて骨を折るとか、そういうことを他人事としか感じていない。当然だ。痛い思いをしたことがないんだもの。

 私はなぜか人が倒れる現場に居合わすことが多い。今まで他人のために三度救急車を呼んだし、倒れた友人を横眼で見たし、隣の同僚がうずくまり立ち上がれなくなったところを見た。人間はこんなに弱いのかと身に沁みている。

 で。

 私は保険を周囲の人にすすめない。私の「周囲の人」である限り倒れる確率は格段に上がるのに。

 そこには保険の持つ胡散臭さが関わっている。

 それについては長くなるので語らずにおくが。私は保険が好きだ。これからも新商品が出るたびにかけていき、病弱な一生をおくるつもりである。

 あなたはどうか。

 どうぞ健康でありますよう。

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