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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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怪盗サイフ仮面

怪盗サイフ仮面

 ここ最近の新聞の一面記事は怪盗サイフ仮面の予告状の話で占められていた。サイフ仮面は世界最大のサイフを盗み出すと、日時まで指定してきたのである。

 その世界最大のサイフは皮革産業で有名である町の町起こしのために作られたものである。今は地元博物館に展示してある。博物館に搬入の際にはクレーン車を使ったという巨大なものを、一体どうやって盗み出すのかと、世界中の耳目が集まっているのだった。

 怪盗サイフ仮面の名が広く知れ渡ったのは「夫婦別姓サイフ事件」が切っ掛けであった。夫婦別姓を認めないのは違憲行為だとして、ある夫婦が裁判を起こしたのである。この夫婦は互いに自立した生活を旨としており、仕事も家事も子育ても、もちろんサイフも別だった。その裁判は夫婦の訴えが棄却されて終わったかに思われた。

 裁判が終わり、その夜、裁判長が帰宅して背広を脱ぐと、サイフがない。すわ、さてはスラれたかと慌てて警察に駆け込んだ。裁判長の妻も同行したが、ふと気づけば妻もサイフをなくしていたのである。だがバッグのなかには二人ぶんをあわせた額の現金やカード類が入っていた。なくなったのは、ただサイフだけだったのである。

 翌日、とある新聞社に二つのサイフと「サイフは自由だ」と書かれたカードが届いた。そのカードの署名こそ、怪盗サイフ仮面であったのだ。』



「ねえ、かずくん。その本、面白いの?」

 ママがかずくんが読んでいる本の背表紙の文字を読む。

『怪盗サイフ仮面、はじめてのお使い』って、変わった題名ねえ」

「うん。たまには変わった本、いいかと思ったんだけど」

「けど?」

「もう読まなくていいや」

 かずくんがテーブルに置いていった本をママは開いてみた。おどろおどろしいタッチで頭に大きながま口サイフをかぶりマントをひらめかせているサイフ仮面の挿し絵を見て、ママは「う〜ん」と唸って再び本を閉じた。

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