絶対防眠安全時計
絶対防眠安全時計
ドクターマカナツの最新発明は「絶対防眠安全時計」。その名の通り、絶対に安眠を妨害し安全に眠りから覚めさせる時計だ。
仕組みは難しく多数の人工知能やICチップやクジラのひげやぜんまいなどが事細かに組み立てられ凡人には計りしれぬ未来的なパワーを発している。ドクターマカナツはこれこそ未来を変える発明品と発明学会に公表した。
したのだが、学界では苦笑で受け入れられ、敢闘賞をたまわった。
ドクターマカナツは自身の大発明である「絶対安眠安全時計」の真価を問うため新聞記者を呼び寄せ睡眠実験を行った。
一時間後、ドクターは安らかに入眠した。
二時間後、ドクターはどんな夢を見ているのか「あと五十本だけ……」と呟いた。
三時間後、ドクターは轟音のいびきをかいた。
四時間後、ドクターは「もうやめて……、やめてください、妻が見ている」とつぶやいた。
五時間後、ドクターは昏睡に陥ったかのごとく身動きしなくなった。
六時間後、ドクターの口からエクトプラズム様の白っぽい煙が吹きだされた。
七時間後、ドクターらしき見た目になったエクトプラズムがヤスキ節を踊っていた。
八時間後……
「どうかな。ドクターの発明でドクターは起きたかね」
プロジェクトのリーダーが実験場である、とある病院の一室を訪ねて聞いた。
「いえ、まだ成果は出ていません」
「なんだと?もう「絶対防眠安全時計」が動く時間だぞ」
「そうです。しかし時計はドクターの安眠を守ることに決めたようで、うんともすんとも動きません」
十六時間後、ドクターマカナツは自身の「絶対防眠安全時計」の効果によって覚醒した。
「おはようございます、ドクター。お目覚めはいかがですか」
「ああ、おはようございます。防眠時計の威力は凄いですね」
「凄いですか?」
「ああ、そうですとも。たった四時間で私を起こしてしまう、なんと乱暴な時計でしょう」
職員は壁の時計を見上げ、曖昧にうなずいた。ドクターマカナツは良い目覚めをもたらす機械を学会に発表し、物議をかもしたが、それが世に広まることはなく、ドクターマカナツ博物館に人を呼ぶにとどまったことはドクターの助手がオブラートに包みドクターに伝え、ドクターはちっともめげずに次の発明に取りかかるのだった。




