だらだら寝だら
だらだら寝だら
春休みが終わって太一郎の睡眠時間は極端に長くなった。休みの間はいつまでもだらだらとゲームをしてママに叱られてようやく寝ていたのだが、あまりに夜更かしがひどかったのでゲームを取り上げられてしまった。中学受験をしない太一郎は小学校と塾以外で勉強などしないから家に帰るとヒマで仕方ない。マンガも少ないお小遣いでは次々に買うこともできない。テレビはいつもパパが好きな番組しかついていない。
しかたがないから十時には寝てしまう。休みの間は二時を過ぎることが多かった。四時間も早寝すれば早起きするだろうとママは思っていたのだが、なぜか太一郎は寝坊が増えた。
「太一郎、あなた夜中に目が覚めたりしてるの?」
あまりに眠りすぎる息子を心配してママが聞いた。
「ううん、ずっと寝てる」
「じゃあ、なんで朝起きられないのかしら」
「ゲームをしてる夢を見るからさ、ずっと寝ていたいんだよ」
ママはオカピみたいなへんな顔をして考え込んだが、しばらくすると太一郎にゲームを返してくれた。
「ゲームをしてもいいけど、はやく寝るのよ。約束できる?」
「大丈夫。早寝早起きして、朝ゲームするから」
それは健康的なのだろうかとママは首をひねったが、太一郎は翌朝のゲームのために意気揚々と八時には布団に入り、寝坊した。
「早起きしてゲームはどうしたのよ!」
バタバタと太一郎を急かしながらママが聞いた。太一郎はのんびりと答えた。
「夢の中では最新作をやってたから。朝起きてから最新作ができるなら、きっと早起きできるよ」
ママはまたオカピのような顔をしたけれど最新作のゲームは買ってやらず、新しい目覚まし時計を太一郎に買い与えた。太一郎は雨に濡れたオカピのような表情で目覚まし時計を見つめつづけた。




