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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
602/888

なんで?

なんで?

「今日の晩ごはん何がいい?」

「なんでもいい」

「もう!またそう言う!なんで男はそうなんだろ」

 毎度お馴染みのやりとりだが、いつも俺は腑に落ちない。俺が食べたいものは「なんでも」なんだから、妻は自分の好きなものを作れば良さそうなものだが。一度「お前が食べたいものにしたら?」と言ったらしこたま怒られた。それ以来、お馴染みのやりとりを続けているのだが。

 妻は俺の意見が聴取できないと知ると子供たちに同じ質問をする。

「カレー!」

「ハンバーグ!」

「高野豆腐!」

 三人の意見を聞いておきながら、今日の晩ごはんは麻婆豆腐になると俺はにらんでいる。冷蔵庫に賞味期限ギリギリの豆腐があり、スーパーの目玉商品は豚挽き肉グラム四十五円だ。そんなとき妻は必ず麻婆豆腐だ。それならば聞かねば良いものを、毎日聞いては毎日怒る。もう挨拶みたいなものだ。妻もそんな感じなのだろう。

 仕事がすんで帰宅すると案の定、テーブルには麻婆豆腐がチーンと乗っている。

「カレーがよかった!」

「ハンバーグはぁ!?」

「……豆腐ちがい」

「文句言わないの。麻婆豆腐だって美味しいんだから」

 ぶーぶー言う子供たちと安売り豚挽き肉にごきげんな妻と囲むいつもの食卓。悪くないな、と日々思う。だから明日も「なんでもいい」と俺は答える。

 そういうわけだ。

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