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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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サボテン女

サボテン女

 年をとると涙もろくなるなんて、誰が言ったの?四十の誕生日、あたしはひとりヒューマンドラマと言われるであろう映画を見ながら、ポテチをむさぼる。

 涙なんて、もう何年流してないだろう。記憶の奥底を探ってみても、涙のかけらも見つからない。最近の記憶にいたっては欠伸したときさえ涙は出ない。ドライアイなのだ。涙もろくなるどころか、人工涙液の助けを借りるていたらくだ。

 ドラマはそこそこ面白い。いわゆるお涙ちょうだい的あざとさがなく、人生の大事なことを淡々と描いている。感動的だ。でも涙は出ない。画面に集中していたら目が乾いた。目薬をさして、まばたき。世界がうるりと歪み、目のはしのほうで水分が光を受けて虹色に見える。

 いいな、涙を流せる人は。悲しいときも感動したときも虹と共に生きている。いつも虹がそばにある。

 まばたき。虹ははかなく消えた。ポテチもはかなく消えた。映画もクライマックスだ。あたしには何も残らない。なーんにも。

 そんな人生もいいじゃないか。涙も流さずひとりで年をとる。からっからの砂漠みたいな人生。あたしはサボテンになろう。とげを生やして近寄るやつをちくちく刺してやろう。そんな人生もいいじゃないか。

 たまに目薬の雨を浴びて、花を咲かせる日もあるだろう。うん。

 ハッピーバースデイ、あたし。

 尖っていこう!

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