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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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夢のような夢

夢のような夢

目覚めてすぐ「ああ、すごくおもしろい夢だった!学校に行って皆に話さなくちゃ!」

と思った依子は、夢の内容を忘れないように、頭の中でグルグル反芻しながら身支度をした。

夢を思い出すために、目が覚めてからも、いつもより長々とベッドでゴロゴロしていたうえに、上の空で着替えや洗顔をしていたため、ふと気付けば、遅刻ギリギリの時間になっていた。

母が用意してくれた朝食の、トーストだけ咥えて家を飛び出す。

角を曲がったとたん、誰かとぶつかった。

「あいたあ…」

思いっきりひっくり返った依子に

「大丈夫?」

と言いながら手を伸ばし、立たせてくれた相手は、目を見張るほどハンサムな青年だった。

依子は思わずぼーっと見惚れ、口からぽろりとトーストが落ちた。

それを見たハンサム青年は、くすくすと笑い出した。

「トーストくわえた美少女と曲がり角でぶつかる。なんてマンガみたいなこと、本当にあるんだね」

「そうですか…美少女とぶつかったんですか…」

ぼーっとして、青年の言葉を、ただ反復するだけの依子を、青年はまた笑う。

「そうだよ。今、君と、ぶつかったじゃないか」

「え!!美少女って、あたしのこと!?」


びっくりした拍子に目が覚めた。

「…へんな夢」

夢の中で、なぜか少女になっていたオレは、しばらく、ぼーっとしていた。

まだ夢の感触が残っていて、自分が女のような気がする。

念のため、胸を押さえてみた。ぺたんこだ。当たり前だが。

ぼーっとしている間に、思ったより時間が過ぎていた。遅刻ギリギリだ。

急いで身支度し、家を飛び出す。

いつも曲がる角に来たころには、夢のくわしい内容は忘れかけていた。

ただ、うっすらと、ここで誰かとぶつかったような気分だけが残っていた。

思わず、立ち止まる。

すると、猛スピードで、トーストをくわえた美少女が角から飛び出してきた。

立ち止まらなかったら、ぶつかっていただろう。

美少女はオレには目もくれず、駆け去って行く。

その後ろ姿を見つめ、なぜだかさびしい気分になったが…。


時間がないことを思い出し、あわてて駆け出す。

駅についた頃には夢のことなどすっかり忘れていた。

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