まあるく
まあるく
ユリは緊張しぃだ。
緊張しぃ、というのは、緊張しやすいたち、というような意味なのだが、細かいニュアンスが、違ってくる。どう違うか、細かくは書かないが、とにかくユリは緊張しぃなのだった。
そんなユリにも試練の時はやってくる。緊張が一個師団でやってくるのが、就職面接。
模擬面接でさえ緊張しぃなユリには厳しいのに、本番の面接はまことにエライことである。
面接日、ユリは約束の時間より一時間も早く目的の会社についてしまう。じっとしていると不安なのだ。
その一時間、ユリの緊張はいやがおうにも増す。どのくらい増すかというと、頭の中身がバターになってとけだしそうなほどだ。ぐるぐる悪い想像ばかりが浮かんでは、頭から離れない。
(なにか……なにか他のことを考えなきゃ……)
ユリはうつろな視線で自分のネガティブを払拭してくれるものを探した。その視線の中にガシャポンが飛び込んできた。
ガシャポン。コインをいれてハンドルを回すと丸いプラスチックの球体が出てくるあれ。ガシャポンだったりガチャガチャだったり、ただのガチャだったり呼び名は様々だが、出てくるものは決まってプラスチックの球体な、あれに、ユリは引き付けられた。中身が何かも確かめず、コインを投入しハンドルを回す。出てきた球体をカバンに突っ込み、またコインを投入。
一時間がたった。ユリのカバンは球体でパンパンになった。
それでも緊張が晴れないユリは真っ青になって面接に向かった。
カバンから履歴書を取り出すときに球体がゴソッとカバンからはみだした。ごわんごわんと音をたてて飛び散る。
あわてて拾い集めるユリの手に、一人の男性が、そっと球体を手渡した。
「採用」
社長の一声でユリの就職は決まった。
ユリは春から、この会社の主力商品、ガシャポンのケースの製造に携わることになった。いわゆる筐体という外側の四角い箱で、大きさも色も形も様々なのだが、細かくは書かない。
とにかくユリは緊張しぃなのだった。




