幼い夢
幼い夢
昼寝から目覚めると家の中はしんとしていた。絵麻は覚えたてのハイハイでママを探しに部屋を抜け出した。
いつもママがいるキッチンやリビングはがらんとして、いつもより広く感じた。部屋の壁がどんどん遠くに行くようで恐くて絵麻は逃げ出した。
長くて暗い廊下を通って玄関に行ってみた。しんとした玄関にママの靴があったが、ママはいない。元来た方へ戻る。ママ、ママ、ママ……。家中探し回って絵麻は疲れはてた。ぺたりと寝そべってワンワン泣き出した。
「あらあら、絵麻ちゃん。どうしたんでちゅか」
絵麻が目を開けるとママが絵麻をのぞきこんでいた。突然ママが現れて、絵麻はびっくりして泣き止んだ。
「お腹好いたかな?おむつかな?」
ママは絵麻のおむつを触ると、そそくさと部屋を出ていった。ママ!絵麻はまた泣き出した。泣きながらハイハイでママを追いかけようと廊下に出た。
廊下はどこまでもどこまでも長く続いていた。暗く寒く孤独だった。絵麻は泣く気力もなく床に座り込んだ。
「やっと静かになった」
ママはほっと肩の力を抜いた。腕に抱いていた絵麻をベビーベッドに寝かせる。
「毎晩ぐずるけど、どんな夢を見ているのかしらね」
絵麻はすうすうと安らかな寝息をたてる。ママの腕からもぎはなされた不安な夢の中をさまよいながら。




