てれれってってってー
てれれってってってー
レベルアップした勇者は突然、僧侶と魔法使いの手を取り、猛烈な勢いで歩き出した。
「どうしたのさ、勇者。トイレ〜?」
僧侶がのんびりと尋ねる。魔法使いが真っ赤になって叫ぶ。
「ちょ、ちょっと!勝手に手を繋がないでよ!アタシはそんな……あんたと手を繋ぎたいなんて……ちょっとは思うけど……」
勇者はきょろきょろと周囲を見渡しながら早口でまくし立てた。
「早く、次のエリアに行くんだ!俺はもうこのエリアにいるわけにはいかない!」
「呪いでもかけられたのかな〜。解除しようかぁ?」
「違う!」
「やっぱりトイレ〜?」
「違う!」
魔法使いが勇者の手を振り払う。顔だけでなく首まで真っ赤だ。
「なんなのよ、いったい!理由を言いなさい!」
勇者はぴたりと足を止めると、うつむいてポソリと呟いた。
「アンデッドだ」
「アンデッドが、どうしたのよ」
「俺はアンデッドが嫌いなんだ!見るだけでも嫌なのに剣で切るとブニュウという手触りがするんだぞ!もう嫌だ!もうアンデッドとは遭遇したくないんだ!」
勇者の雄叫びを聞き付けたのか、近くの茂みががさがさとなって、歩く死体が現れた。勇者は剣を抜くと歩く死体に駆け寄った。
「うおおぉぉお!」
気合一閃、歩く死体は一太刀で真っ二つになった。
「すごいじゃない、勇者。ちっとも苦手なんかじゃないん……」
魔法使いは勇者に近づいて、勇者の腕に鳥肌が立ち、ぶるぶると震えていることに気づいた。
「……わかったわ。早く、行きましょう」
三人はアンデッドに遭遇しないように気を付けながら次のエリアに移動した。
勇者は絶望した。
次のエリアはピラミッド。アンデッドの巣窟だ。バタン、と大きな音をたて勇者は地面に倒れふした。
「勇者〜。疲れたの〜?回復しようか〜?」
のんびりと尋ねる僧侶の声を勇者は遠くに聞きながら、アンデッドのいない夢の中へと旅だった。




