手作りできるモン!
ポストに入っていたピザ屋のチラシを、夫が熟読している。
「…なあ、ピザ頼もう」
「だめ。そんな高いもの」
由香は一蹴する。
「いいじゃないか、たまには。贅沢しようよ~」
「だめ。むだ。」
「ピザ食べたい、食べたい、食べたい、食べたい~!」
子供のように手足をバタバタさせて駄々をこねる夫を、気持ち悪そうに見ていた由香が、ため息をつきながら言う。
「わかった、わかった。作るわよ、ピザ」
「え!?ピザって、作れるの!?」
「そりゃ作れるわよ。ピザ屋のピザだって、人が作ってるんだから」
「そう言われたらそうだけど……。わ~い!!ピザだ!ピザだ!!」
夫は踊りながら玄関へ向かう。
「あなた?どこ行くの?」
「ビール買ってくる!」
「あ、じゃあ、一緒に、冷凍パイシート買ってきて」
「OK!!」
夫は、好きな食べ物を与えておきさえすれば機嫌が良い。
扱いやすい生き物だ。
夕食に、由香はピザとミネストローネを作り、夫がビールを食卓に出す。
よりによって、一番高いビールを買ってきている。夫の小遣いだから、何も言わないが。
「ナニコレ!!メチャクチャ、ウマインデスケド!!」
「カタコトですけど。どこの国の人ですか?」
「ワタシ、コナニうまいピッツァ、タベタコトないアル!」
「それはよかったわ~。もう、ピザ屋はいらないわね」
「いや、いる。たまには、あの、チープな味が食べたいじゃないか」
「そうね、たまにはね」
と、相槌を打つが、由香はピザ屋に電話することを許可する気は毛頭ない。
「ところで、これ、何ピザ?」
「栗原さんちの卵ピザ。作り方はこちら↓
用意するもの
冷凍パイシート
野菜、冷蔵庫のものてきとうに、沢山(長ネギはあったら美味しいです)
卵3個くらい
ソーセージとか入れても大丈夫なくても大丈夫
オーブンシートは必須
作り方
1.オーブンの受け皿に、オーブンシートをみっちり敷き詰める。側面まで覆います。
2.冷凍パイシートを麺棒で薄くのばします。二~三倍くらいの大きさに。
3.オーブンシートを敷いた上にに、のばしたパイを敷き詰めます。側面にも壁を作ります。
4.1センチ角くらいに細かく切った野菜をパイの上にザクザクたっぷり乗せます。
冷蔵庫の余りもの全部突っ込みます。茗荷とかも以外に美味しい。
5.卵を溶いて、塩コショウして、野菜の上から流しかけます。
6.200度のオーブンで10分くらい焼きます。様子見て、卵が固まってなかったら焼きを追加して
栗原はるみさんのお料理本には大抵載ってる定番メニューです。おいしいので、ぜひ作ってみてね」
「……え、それ、俺に言ってるの?」
「ううん、別に?」
「あ、そ。美味しいので、また作ってください」
「わかりました」
材料費で一番高価な冷凍パイシートを夫が小遣いで買ってくれたので、今日の夕食は二人合わせて200円以下で納まり、由香はホクホクと喜んでいた。




