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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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ゴローの一日

ゴローの一日

 ゴローは犬小屋の中で骨をかじりながら考えた。わしはいつもドッグフードと骨ばかり。たまには肉を食べたいもんじゃ。その時、飼い主の美恵子の足音がした。

「ゴロー、ご飯だよ」

 犬小屋から出て皿をのぞくと、案の定、入っているのはいつものドッグフードだ。ゴローはため息をついてその場に座り込んだ。

「あれ? 今日も食欲ないの? なんでかなあ、おじいさんになったからかなあ」

 ドッグフードじゃなく肉が食べたいんじゃ、肉。ゴローの呟きは美恵子には「くーん、くーん」と悲しげに鳴いているようにしか聞こえない。

「うーん、困ったなあ、どうやったら食べてくれるかなあ」

 肉なら食うぞ、肉なら。

「そうだ、水でふやかして柔らかくしたら食べやすいかも」

 そんなことしたら、ただでさえ不味いドッグフードがさらに不味くなる。勘弁してくれ。

「おじいさんだし、あっさりしたものがいいのかなあ、野菜スープとか」

 野菜スープ? そんなもんで腹がふくれるか。肉をくれ、肉を。

「そうだ、ドッグフードを変えてみようかな?」

 おお、そうしてくれ。それで肉いっぱいのやつにしてくれ。

「よし! この『肉たっぷりワンちゃんの大好物』は、もう捨てちゃって、『野菜たっぷりワンちゃんの健康食』にしようね、ゴロー」

 なにい!? 肉たっぷりだと!? そ、そういえば、このかぐわしい臭いは確かに肉! まずそうだけれど確かに肉! わしは肉が大好きだあ!

 ゴローは皿に顔を突っ込んでガフガフとドッグフードを食べ出した。

「わあ、良かった。元気が出たみたい。これならドッグフードを変えなくていいわね」

 そうとも、わしはこのドッグフードが大好きじゃぞ。

「やっぱり一番安いのでも食べられるもんね。」 ……一番安いの……。ゴローの食欲は減退したが、肉を食べたい欲求にはあらがえず、ガフガフと食べ続けなければならなかった。

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