夢うつつ
夢うつつ
「夢」
夢には三つの種類がある。
一つは夜見る夢。白黒もあれば総天然色もある。幸せな夢もあれば恐い夢もある。
二つ目は叶えたい夢。うつつに見る夢。明るくも厳しくもある夢。
そして三つ目はかなわなかった夢だ。
学生時代、服飾関係の職につきたいと思っていた。そのために被服科がある短大を受験したかった。三者面談でそう言うと、母と担任が口を揃えて言った。
「あなたは自分より成績の悪い人を軽蔑するクセがあるからやめておきなさい」
私の夢は粉々にくだけた。たぶん、私の心も。
二十年以上たったが私は人とうまく接することができない。出会う人、出会う人、みな良い人だと思わないといけないという呪縛にしばられている。どうしても良い人と思えない人をこの世から消えてほしいと願うほどに憎む。
人は一面的なものではない。複雑な形状の多面体だ。私が見ているのはその人の一面だけでしかない。それだけで相手を憎むのはお門違いだ。
頭ではわかっている。
人を憎むということは自分を蔑むことだ。人を赦せない狭小な人間であると自ら認めることだ。自分で自分を断罪することだ。
小さいころには女の人はみんな結婚して子供を産んで幸せになりました。めでたしめでたし。そんな未来が当たり前なんだと思っていた。誰かを愛することが驚くほど簡単だったのに。
私には夢がある。うつつの波にもまれながら水面になんとか顔をだそうともがいている。
人を好きになりたい。人を嫌いになりたい。人を赦したい。自分を愛したい。
それが私の夢。
 




