麗美の場合
麗美の場合
麗美は男性と付き合っても長くもたない。二、三ヶ月もてばいい方で、ひどいときは三日で終わる。最長で半年だ。それでも長すぎたと麗美は思う。
男性達は麗美の美しさに群がってくる。麗美はその中から適当に選んで付き合う。ある男は金持ちだった。ある男は顔が良かった。ある男は知性があった。
けれどどんな男も麗美に満足を与えることができなかった。麗美はすぐに飽きた。
「俺、麗美さんのためなら何でもするよ!」
そう言った男は若かった。まだ少年といえるほどに。麗美は初め、少年のことを無視した。けれど少年は、いつまでもいつまでも麗美の後をついてきた。麗美は無視するのも飽きて、少年と付き合う事にした。
少年は麗美を喜ばせようと様々な事をしてみせた。アルバイトで貯めた金で高価なプレゼントを買ったり、麗美の美しさに近づくために身綺麗にするよう心がけたり、麗美を退屈させないよう本を読み知識を蓄えた。
少年はそれらを麗美に知らせる事なくそっと行ったのだが、麗美にはすべてお見通しだった。
「どうしてそこまでするの?」
麗美にすべて見抜かれた恥ずかしさに少年は真っ赤になった。
「僕は麗美さんの美しさを愛しています。麗美さんは僕が理想とする生き方を僕にくれます。僕は麗美さんに似合う男になるのが夢なんです」
少年はまっすぐに麗美の目を見つめた。
「どうか、僕に時間をください。あなたに似合う男になってみせます」
麗美は小首をかしげて考えた。少しの間をおき、その美しい弓形の唇を開いた。
「待ってあげるわ。私にも、どんな男性が私に似合うか、わからないの。教えてくれるのよね」
「はい!」
少年は元気よく返事をした。
「約束よ」
麗美と少年は小指をからめて約束した。
少年は一生涯、研鑽を続け、麗美との約束を守らぬままだった。麗美は約束通り、少年の成長を見守り続けた。




