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彼女の話
彼女の話
彼女は朝、幸福感の中で目覚める。世界はぴかぴかと輝き、新しい喜びにあふれている。彼女は生きていることを全身で味わう。
私は朝が嫌いだ。目覚めると絶望に襲われる。世界は暗く、いくつもの苦しみで真っ黒だ。私は生きていることを後悔する。
彼女は明るく挨拶する。隣人に、恋人に、世界中に挨拶する。
私には何もない。誰もいない。
ある日、私は彼女と出会う。それは遠い未来で、それは過ぎた過去。彼女は明るく挨拶する。
私は彼女の明るさに目映い光に目がくらみ、何も見えなくなる。何もない真っ白な世界を見る。
私は真っ白な朝に目覚める。
その時私は世界中に挨拶する。
「おはよう。おはよう。私は産まれた!」
私が目覚める朝、彼女は私を抱きしめる。




