ウはうどんのう
ウはうどんのう
「うどん!」
「はい、憲太の負けー」
憲太は首をひねり「うどん……」とつぶやく。
「だから、うどんは最後が“ん”だろ。しりとりは、んがついたら負けなの! いい加減覚えろよ」
四年生の武瑠は三つ年下の憲太と遊ぶのがあまり好きではない。とろくさいし、すぐ泣くし、足も遅いからだ。今も憲太は目に涙を溜めてそれが今にも決壊しそうだった。
「ほら、泣くなよ。なんか別の遊びにしようぜ」
「やだ! しりとりがいい!」
「そんなこと言って、どうせまたお前が負けるんだぞ」
「負けないもん!」
「泣いても知らないからな」
「泣かないもん!」
武瑠は、ふうっと溜め息をつく。
「じゃあ、しりとり。り、な」
「りぼん!」
「……お前なあ。わざとか? わざと負けてるのか?」
「負けてないもん」
「お前なあ」
「んがついたら勝ちなの!」
「はあ? 勝手にルール変えるな!」
「勝手じゃないもん!」
両手を握りしめて涙目で訴える憲太の姿を見て、武瑠はまた溜め息をつく。
「はいはい。じゃあ、んから次始めるわけ? ないよ、そんな言葉」
「ある」
「なんだよ」
「んどう」
「はあ?」
「んどう。今日のお昼ご飯、んどう食べに行くってママが言ってた」
武瑠はさらに大きな溜め息をついた。
「じゃあ、そろそろ帰るか。んどう食べに行こうぜ」
「んう!」
「もういいから、それは」
武瑠は憲太の頭を軽く叩いた。憲太はニイっと笑って武瑠の後をついて走った。
 




