未来を記す
未来を記す
仕事が始まる。シフト制の仕事と、内職を掛け持ちすることになった。どちらも日にちを自己管理せねばならない。今まで9時5時で週休二日固定の仕事しかしたことがない。変化に多少の不安はあるが、それよりも楽しみな気持ちの方が大きい。元来、新しい経験が好きなのだ。
手帳を買わなければ。日々の勤怠や仕事の納期を記さねばならない。普通の人より記憶力が悪い私はそれはもう丁寧に書かないと出勤日を忘れかねない。手帳一冊に自分のクビがかかってくる。手帳選びは慎重にせねば。
今まで簡単な予定を携帯のカレンダー機能でメモしていた。いつも持ち歩いているし、予定時間を知らせるアラームも使える。重宝している。しかしそろそろ携帯電話も寿命だ。いつまでも頼っているわけにはいかない。
それに何より、携帯のスケジュール機能だと予定は何だかデジタルで自分がガチガチの人間になったような気がするようになったのだ。融通がきかないような、機械に動かされているような。携帯画面の角ゴシックのごつごつした文字が私を急かしているような。
仕事を選ぶ時、何を基準にするかは人によって違うと思う。それはその人にとって何が大切で優先順位が高いかがはっきりわかる時だと思う。就職面接に行った際にも、どうしてその職につきたいのかは必ず聞かれる。給与・勤務時間・通勤時間などの基本事項は大体考慮するだろう。人によって変わるのはその後だ。
人と接することが好きだから接客、一人コツコツする事が好きだから経理事務、人の役に立ちたいから介護士。いろいろな理由があり、色々な職がある。世の中には確かに需要と供給ということがあって、自分が求めることと求められることがマッチングすることは必ずある。ただそうあるためには、自分が何に向いていて何ができるかを知っていなければならない。
それよりも大事なのは自分が何者になりたいのか、だと思う。
手帳はできるだけ手書きの方がいい。そう思うのは私が書が好きだからかもしれない。手書きの文字にはその人があらわれると信じている。上手い下手は関係なく、気心というか自分が何者かということが如実に表れると思う。美術館で優れた書を見ても好き嫌いが分かれるのは、書道家の人となりを見ているのではないかと思う。
手帳に手書きで予定を記す。それは未来を自分の手で掴みとるさまに似ている。自分の行く先を自分で決め、そこへ向かって日々を進んでいくのだ。手帳は自分の指針にもなり得る。
今日、新しい手帳を買いに行こう。そうして未来を記そう。辛い時も喜ばしい時も自分の手でしっかりと記憶に書きのこすために。
 




