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不可能までもうすこし
不可能までもうすこし
「いいかげん、部屋を片付けなさい!」
母親に怒鳴られ麻友子はしぶしぶ重い腰を上げた。自分の部屋に入ると散らかっているものたちを足でよけて道を作る。脱ぎ散らかした服、お菓子の空き袋、倒壊した本の山。とりあえず、脱ぎ散らかした制服をかけるところから手をつけるか、とセーラー服をハンガーにかけて壁のフックにかけようとしたが、すでにバナナの房のように掛けられていた衣服の重量と相まって、フックはガタンと音をたてて折れた。
「あちゃあ……」
落ちた服をしゃがみこんで拾っていくと、奥の方から色紙が出てきた。麻友子の自筆だった。
『部屋を散らかさない!』
正月の書き初めだった。麻友子はカレンダーを見た。十一月も中旬だ。あと一ヶ月半、今年の抱負を遂行する時間はある。時間はあるが、麻友子のやる気は先程のフックと共に折れてしまった。
「よし、来年の目標にしよう」
麻友子は色紙を大事に机の引き出しにしまって、片付けを終えた。




