表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
438/888

深夜のラジオ

深夜のラジオ

 思えば私はよく寝る子供だった。

 小学生の間は夜九時までには布団に入っており、朝は七時半までいびきをかいていた。いまではロングスリーパーという単語も知り、長時間睡眠が必要なことに違和感もないが、高校生の頃は自分がいつまでも幼いように思えて十時過ぎには眠くなってしまうことを同級生には話せなかった。同級生たちは深夜まで試験勉強をしているというのに。私にとっての深夜は午後十時半過ぎのことだった。


 祝日の前の日だったと思う。めずらしく夜更かしをした。と言ってもたかが十時半過ぎまで起きていただけなのだが。突然部屋の片付けをしたくなり戸棚など漁っていると小さなラジオが出てきた。電源をいれると、ちゃんと音が出た。ダイヤルをくるくる回していると、聞きなれた声がした。声優の塩沢兼人さんが台詞を喋っていたのだ。私はその時に初めてラジオドラマというものを知り、即座に虜になった。塩沢兼人さんが好きだったこともあるし、その時のドラマが好きなSFだったことも私をラジオドラマ好きにさせた要因だったと思う。


 ラジオから流れる音だけでありありとシーンが脳裏に映し出された。異星を探検する人々。立ちふさがる巨大生物。戦いの果てに倒れた塩沢兼人さんの掠れた吐息の色っぽかったこと!

 私は毎日、十時四十五分にラジオをつけるようになった。週がわりで様々なドラマが流れていた。


 しかし、如何せん私にとって十時四十五分は深夜なのだ。眠い目をこすりながら何とかラジオのスイッチは入れたもののドラマを聞きながら眠ってしまうことがほとんどだった。ストーリーテリングの睡眠学習をしていたのだとうそぶいてみても、聞き逃した悔しさは今も残っている。


 その番組はNHKラジオ『青春アドベンチャー』。

 今なお続く人気番組だ。大人になり夜更かしできるようになったのに、今はもう聞いていない。たまには青春を思いだしラジオのダイヤルを回してみようか。

懐かしいあの声にはもう出会えないけれど、あの日のワクワクしながら眠い目をこすった想い出は耳の中によみがえるだろうから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ