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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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アラビアンナイト

アラビアンナイト

 友人に連れられてアラビアに来た。数国を巡ってアラビア語を砂煙のように浴びた。褐色の肌の男たちに押されて道の脇によける時、自分の非力さを自覚させられた。

 舌も同じようにやわで、スパイスの多い料理に辟易している時、友人がカフェに誘ってくれた。注文したのはコーヒーと水タバコ。コーヒーにもカルダモンというスパイスが入っており独特の香りだが、なぜか料理では嫌気がさした香りを、コーヒーだと馴染み深く感じる。

 水タバコは60センチほどの薄緑色のガラス瓶に水が満たされており、天面に煙草の葉と炭が置かれ、ガラス瓶から伸びるパイプを吸う。一吸いすると煙草の煙が水をくぐり、水中にこぽこぽと泡が生まれる。その音も吸い込んでいるように感じて、海に沈んでいくような気がする。

 外は強い日差しと喧騒で肌が焼けるようだが、店の中はやけに静かで水タバコのこぽこぽという音だけが耳に優しい。


「悪くないな」


「悪くないだろ」


 友人とパイプを回し飲みしながら体を深く椅子に沈めた。

 水タバコは一時間ほどで隅が消え、私と友人は席を立った。店の外に一歩出ると別世界に来たようだった。活力と汗と油の匂いに包まれる。けれどなぜか、その力強さは脅威とは感じられず、私はこの砂の国に生まれたような、この国の出身であったような気さえした。

 堂々と道の真ん中を歩き人ごみにまぎれ、月の先へ歩いていった。

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