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美紀子の旅路
美紀子の旅路
ある時から美紀子はお化けが見えるようになってしまった。
見えるとなると世界はお化け屋敷だ。あちらの角に地縛霊がいたと思うと、こちらの池にカッパがいる。草の陰から目だけが睨んできたり、電信柱の陰から足のない子供が飛び出したりする。
そのたび美紀子は声にならない悲鳴をあげ、あちらこちらと逃げ回る。
お化けたちは面白がっているのか、美紀子のあとを追ってくる。
ある日、美紀子はたくさんのお化けに追われ、寺に逃げ込んだ。
「むむ、悪霊!」
住職は美紀子の方に近づくと、数珠をならして祈祷を始めた。美紀子にくっついてきたお化けがどんどん浄化されていく。美紀子はへなへなと崩れ落ちた。
事故にあって命を落としてから怖がり続け、自分のことさえ怖かった日々がやっと終わった。
美紀子は安らかな気持ちになり、住職の祈祷をうけ、静かに成仏した。




