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くちどけ
くちどけ
「ふおぉぉぉぉ……」
思わず口から妙な声が出た。手にした二つ目の飴をしげしげと眺める。
楕円形の円柱の両端を鋏で切ったような形。
半透明の筋がいく筋も重なり美しい白を描き出す。
指でそっとつまんでさえも崩れ落ちそうなほど繊細だ。
口にいれ軽く歯をたてるるとしゃりしゃりと音をたて崩れ去る。
それは慈味。それは甘美。それは儚い冬の朝の。
「霜ばしら」
その名前通り、寒い早朝にだけ現れる奇跡のような自然そのままに、口の中に冬がやって来る。
けれど。
その味は心の底から暖まる。
大きな海苔の缶に似た容器に、米粉の蒲団にくるまれて、壊れやすい飴はやってくる。
北の国からやってくる。
これほど注意深く運ばれたお土産を私は他に知らない。
霜ばしら、九重本舗のお菓子です。
http://www.tamazawa.jp/body_products_shimobashira.html




