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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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偶然の女神

偶然の女神

「うわぁ!」


飛行機のあちこちから喚声があがった。その声に三奈は目を覚ました。

キョロキョロ見回すと、どうやら皆窓の外を見ている。

三奈も窓に目をやる。


「わぁ……」


皆と同じ声が出た。

真っ暗な空にオーロラがたゆたたっていた。青から緑にゆっくりと色がかわる。カーテンが風に揺れているようにゆったりと形を変える。


極寒の空だろうに、春のようなイメージを抱く。

三奈は鞄から銀塩カメラを取り出すとオーロラを写真に収めた。窓側に座れて本当に良かった。

隣に座っている女性が首を伸ばして窓を見ようとしている。席を変わってあげると満面の笑みが返ってきた。


女性がオーロラを堪能したころ、席を元に戻した。


「オーロラって女神の名前なんですってね」


女性がにこにこと口を開いた。


「そうなんですか?」


「ローマ神話の中で、朝を運んでくる女神の名前だそうよ」


三奈はもう一度オーロラを見つめる。


「じゃあ、あの光は曙光を落としちゃったのかもしれないですね」


三奈と女性は顔を見合わせ笑った。

互いに名乗りあい、オーロラにワインで乾杯をした。



三奈は帰宅してすぐに写真を現像した。オーロラは今もたゆたたっているように見えるほど、よく撮れている。

デジタルカメラでなかった偶然を嬉しく思った。

数枚、女性の写真もある。偶然隣り合った記念に写したものだ。三奈の写真は彼女のカメラに納められた。

写真を送る約束はしなかった。いつかまた偶然の再会を果たしたら、その時に渡す約束をした。


きっとその日は間違いなく来るだろう。オーロラは毎日間違いなく朝を運んでくる女神なのだから。

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