ミミズ
ミミズ
大樹のあだ名は『ミミズ』。
校庭の花壇にしゃがみこんでミミズを取って瓶にいれているところをクラスメイトに見つかったのだ。それ以来ミミズと呼ばれている。
「大樹くん、みんなでドッジボールしよう」
ミミズ取りをしていた大樹にクラスメイトが声をかけた。大樹はドッジボールなんかよりミミズを取っていたかったが、これ以上クラスで浮くのはイヤだった。
しぶしぶうなずき、ドッジボールのコートに入った。すぐにボールに当たり外野に出て、一回もボールには触れなかった。
それからも大樹は皆に誘われるままドッジビーやカードゲームに参加した。ミミズの備蓄はどんどん減っていった。
「ぼく、あそばない」
ある日またクラスメイトに誘われた時、大樹は思いきって断った。
「またミミズ取るの?」
大樹はだまってうなずく。
「そんなに取ってどうするの?」
「……釣りのエサ」
クラスメイトは笑い出した。笑われた大樹は下を向いていた。
「なんだ、それ早く言えば良かったのに」
笑い終わったクラスメイト、広大は大樹の手からスコップを取ると花壇に向かった。
「一緒にミミズ取ろう。そんで俺にも釣り教えてよ」
大樹は大きくうなずいた。
その日から大樹が『ミミズ』と呼ばれることはなくなった。




