神も仏も
神も仏も
「神は質素なものを愛する」
まり子の信仰する神は質素なものを愛するらしい。産まれたときから貧乏暮らしのまり子は質素以外の事を知らない。初めて教義を知ったとき、自分は神様に愛される資格があるのだと天にも上る気持ちだった。
けれど就職する年齢になったまり子を教会の仲間は心配した。まり子の服は質素ではなく粗末だと思ったから。
仲間たちはまり子にお下がりの服を渡した。まり子は頭から爪先まで貰い物を身に付けた。服にかけるお金がまったく必要なくなった。
浮いたお金で生まれて初めてマスクメロンを買った。あまりの美味しさに、一人で一玉全部食べてしまった。贅沢をした罪悪感から、まり子はいつもの三倍の時間お祈りし続けた。
無事に就職したまり子の生活はがらりと変わった。給料日にはマスクメロン。毎日お肉。飲み物は自動販売機。それでも服はお下がりを着続けた。教会の仲間はまり子が変わったことに気付かない。
「神は質素なものを愛する」
贅沢をしても罸など当たらないと知ったまり子は次第にお祈りをしなくなった。それでも教会には通った。お下がりの服を貰いに。
ある日、高級レストランで食事をして店を出たまり子は教会の仲間とばったり出会った。仲間は気まずそうに俯き足早に去っていった。その後ろ姿は粗末で惨めだった。自分の後ろ姿もそうなのだと教えられた。
まり子はお下がりの服とともに信仰を捨てた。
その病に侵されたとき、まり子は天罰がやってきたのだと思った。贅沢な服を捨て日々の食事を改めお祈りし、教会に通った。仲間は帰ってきたまり子を温かく迎えた。
まり子の病は次第に軽くなった。神様のおかげだと、まり子はますます信仰にのめり込んだ。
まり子の病は痛風。はたして神のお告げはまり子を救った。




