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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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正座して

正座して

金が尽きた。

バイト代が入るまで10日。俺の財布の中身は18円。逆さにふっても塵すら出ない。

戸棚を開けたら、カップ麺が3個でてきた。どんなに漁ってもそれ以上なにも出てこない。いや、なにもというか、ベーキングパウダーはでてきた。俺は菓子など作らないし、ホットケーキも焼かないというのに。

戸棚をパタンと閉め、頭を抱える。

カップ麺3個で10日。一日一個弱。死にはしない。死にはしない。が……。




考えていてもらちが明かない。腹はますます減ってくる。とにもかくにも湯を沸かし、カップ麺をいただくことにする。


湯を注ぎ、蓋をして3分待つ。

カップ麺の前に正座して、俺はしばし考える。考える時間は3分ある。

このカップ麺をもっとも効率よく高カロリーにする方法はないものか。

腕を組む。時計を見る。残り2分。

冷蔵庫はきれいにカラだ。製氷器に氷があるばかり。……うん、水増しという手は悪くない。氷は入れよう。しかし、水腹はすぐに減る。ほかになにかないものか……。砂糖……は買っていない。使わないから。ああ、バイト代が入ったら、砂糖を買おう、使わなくても。

頭をかく。時計を見る。残り1分。……ベーキングパウダー?……いやいやいやいや。ベーキングパウダーは違うぞ。それは粉を膨らますものであって、カップ麺を増量するものでは……。

いや、カップ麺の麺は小麦ではないか。小麦が膨れるのでは? うん。そうかもしれない。いや、きっとそうだ。

時計を見る。残り20秒。よし、ベーキングパウダーだ。

俺は正座を解き立ち上がり、戸棚に向かう。扉を開くと、ポツネンとベーキングパウダーが立っている。俺はベーキングパウダーを手に取り時計を見る。残り10秒。俺はベーキングパウダーを手に大股にテーブルに近づき正座した。

残り5秒。

ベーキングパウダーの箱の封を切る。

残り4秒。

ベーキングパウダーの袋を取り出す。

残り3秒。

ベーキングパウダーの袋を切る。

残り2秒。

ベーキングパウダーの袋の口を大きく開ける。

残り1秒。

ベーキングパウダーを右手にカップ麺の蓋を左手で押さえる。

カウント0。

俺はカップ麺の蓋を開け、ベーキングパウダーを……

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