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あっ……
あっ……
「あっ……」
アイスをぶら下げてコンビニのレジに並んでいる正之助の前に、おばあさんが割り込んできた。
割り込みは悪いことだ。小学生の正之助だって知っている。正之助は注意しようかと思った。
けれど、相手はおばあさんだ。お年寄りは大事にしなければならない。電車やバスでは席を譲る。だったらコンビニの列も譲るべきではないだろうか?
正之助は迷った。迷っているうちに列はだんだん前に進んでいき、いよいよ次はおばあさんの番、という時に隣のレジのお姉さんが声をかけた。
「お待ちのお客様、こちらへどうぞ」
おばあさんはさっさと、そちらのレジへ移った。正之助の順番は最初のとおりになった。けれど正之助の気持ちは元に戻らない。
正之助が無意識に握りしめていたアイスは半分溶けてべちゃべちゃになっていた。




