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彼岸の色
彼岸の色
今年もあの人のお墓の回りに彼岸花が咲いた。お墓の掃除を終えると、彼岸花を摘む。真っ赤な花弁は私の手のなかで燃えるようだ。あの人が愛した夕日のように。
鍋に湯を沸かして花を入れる。じっくり煮込むと湯が赤く染まる。火を止め酢酸液を定着材に、彼岸花の染料の出来上がり。真っ白なハンカチを染めていく。
白が彼岸花の中に飲み込まれ、見る間に赤に染まっていく。染液から取り出して絞ると柔らかなピンクに染められている。それはまるで恋心のようで。
あの人がお墓に入ってしまってから毎年一枚染めたハンカチも、もう十枚目。私の心と同じ色。
毎年秋にあの人から届く彼岸の赤を待ちわびて。来年もまた届くだろう彼岸の花を待ちわびて。




