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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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楽園

楽園

そこにはあらゆる草が生え、花が咲き、果物が生る。

そこにいる人たちは、ただ果物をとって食べるだけで日を過ごした。


ある日、一人の人が、花を摘み、口にいれた。

花は苦味と甘味を人に覚えさせた。

また人は草も口に入れた。草は人にえぐみと噛みごたえを覚えさせた。


そしてまた人は果物をとって食べた。食べなれた果物は味気なく、これなら草を食べた方がマシと思えた。


人はあらゆる草を、あらゆる花を摘んで食べた。

中には猛毒のものもある、中には中毒性のあるものも。

それでも人はすべてのものを食べるという欲求に駆られ続けた。


人にかえりみられなくなった果物は地に落ち、あるいは枝に下がったまま乾いていった。

ある日、一人の人が、枝の上でぐじゅぐじゅと滴を垂らす果実を見つけた。すべてのものを食べる欲求が、果物に手を伸ばさせた。

それは十分に発酵した酒だった。

人はすべての果物を口に入れた。あるものは乾ききり、あるものは嫌な滑りと嫌な臭いを発していた。

酒になった果物はごく少数だった。


人は果物がどのように変化するのか観察した。そうして樹上の甘露を待つだけでなく、自らの手で、酒を作り出す方法を考え出した。


「……というわけじゃから、先人の知恵と工夫を称えるために、わしは酒を呑むのじゃ」


「じいさん、神話がいろいろ混ざってるぞ。酒は飲んでも呑まれるなよ」


「ういー」

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