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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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相思相愛

相思相愛

 僕の彼女はハダカデバネズミに似ている。

 肌色と言い、出っ歯と言い、丸くて小さい目も似ていてとても可愛らしい。

 というか、彼女に似ているから僕はハダカデバネズミを可愛いと思うようになった。

 

 彼女は僕の女神だ。

 僕がどんぞこで地面をのたうちまわっていた時、彼女だけが僕を助けて励ましてくれた。今だって僕のためにと言ってお料理教室に通ってくれている。もともと料理上手な彼女だけど、もっとレパートリーを増やして僕に手料理を毎日食べさせたいと言ってくれた。僕だって彼女の作った味噌汁を毎日飲みたい。


 そこで、彼女にプレゼントすると決めた小さな箱をポケットに隠し、彼女を迎えに行く。お料理教室から出てきた彼女は満面の笑みで僕に手を振る。道行く人が彼女の笑顔に振り返る。僕は彼女の愛らしさにメロメロになる。

 彼女はうねるように体を揺らしながら僕のそばに駆け寄ってきた。


「迎えに来てくれたの? ありがとう!」


「ちょっとでも早く君に会いたかったんだ」


 彼女は照れて頬をピンク色に染め、ベリーショートの頭を掻いた。


「今日は受け取ってもらいたいものがあるんだ」


「え? なに?」


 僕はポケットの中の箱を取り出すと、ひざまずいて箱の蓋を開け彼女に差し出した。


「……ハダカデバネズミ?」


 箱の中には一匹のハダカデバネズミ。


「この子が一番君に似ていたんだ。可愛いだろう? 僕といっしょにこの子を育てていってほしいんだ」


 彼女はわなわなと肩を震わせ俯いた。どうしたんだろう、といぶかっていると


「……ぷっ」


「え?」


「ひゃははははは! それ、プロポーズ?」


 お腹を抱えて笑い出した。


「そ、そのつもりだけど」


「うひゃひゃひゃひゃ! お腹痛い! 面白すぎ! うひゃうひゃひゃひゃ!」


 彼女はハダカデバネズミの女王の鳴き声に似た笑い声を上げ続ける。僕は心配になってきた。


「ひー。笑った笑った」


「あの……、返事は……?」


 彼女は両手で大きく○を描く。


「やった! ありがとう!」


 僕がだきつくと、彼女はまたひゅひゅひゅひゅひゅと笑った。


「あなたのピエロみたいな顔も好きだけど、プレゼントセンスも大好き!」


 こんな僕の顔も好きでいてくれる。彼女は本当に僕を愛してくれているんだなあ、と彼女の笑顔をしみじみと見つめた。

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