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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 86

飛行機はウズベキスタンの首都、タシケントに降りた。

色々な服を着た色々な思想を持つ人が好き勝手に歩き回っている。

石造りの街並みは異形の町を思い起こさせた。

絢香はバックパックを背負いなおして歩き出した。


バスを乗り継いで東へ、東へ。天山山脈の裾野に続く高原地帯へ。

言葉は片言しかわからない。それでも絢香はその場所を尋ね、ユルタという、ゲルやパオに似た遊牧民が暮らす移動式住居を渡り歩いた。

季節はうつろい、冬に向かおうとしていた。



どこまでも礫地が続く丘を登っていく。辺りには灌木がちらほら見え、草が枯れかけた地面は茶色く寒かった。


遠くに動物の群れが見えた。羊か山羊のようだ。絢香は足を速める。

近づくにつれ、群れを追い立てる馬上の人影が見えた。

思わず走り出した。

歩き通しで重かった足も、背中で邪魔だったバックパックも、今は気にならない。ただ、その人だけを目指して走った。


足音に気づき馬を止め、振り返ったその人は逞しい褐色の肌をしていた。黒い瞳で絢香を見つめる。


「……あやか?」


高い標高の地でいきなり走った絢香は、息を乱し膝に手をつき酸素を求めてあえいだ。


「絢香!」


その人は馬から飛び下り、絢香のもとへ駆け寄る。絢香の肩を抱き、背をさする。

絢香よりずっと背が高かった。絢香よりずっと大きな手だった。けれどまっすぐに絢香を見つめるその目は、少しも変わってはいなかった。


「雷三」


絢香は手を伸ばし雷三の頬に触れる。


「雷三、いえ、iyun o`n beshinchi sana。あなたにあいたかった」


雷三は絢香を抱きしめた。


「俺もだ、絢香。ずっと絢香にあいたかった」


絢香も雷三の背に腕を回し、しっかりと抱きしめた。

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