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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 81

シンデレラは毎日、絢香に会いに来てくれた。日本語で話し、日本語で聞いてくれた。

絢香はシンデレラの親切に感謝し、しかし、アンナの立場が変われば途端に意地悪な姉さんになるのだと、心を開くことはなかった。


ある日、シンデレラが嬉しそうに絢香に語りかけた。


「iyun o`n beshinchi sanaは、ああそう、あなたが雷三と呼ぶ少年は、国に帰れることになりました」


「雷三が!雷三はどこの国へ帰るんですか!」


「O`zbek」


「おぅ……ずべき?」


「日本語ではなんと言いましたか……ウズベキ……」


「ウズベキスタン!?」


「おう!それです!」


シンデレラはにこにこと、それは嬉しそうに笑った。


「よかったですね」


絢香は胸のなかで嵐が起きたかのようで、自分の胸をかきむしった。

雷三は帰れる。

雷三に会いたい。

私は帰れない。

雷三に会いたい。

私は檻のなか。

雷三に会いたい。

『同じ檻のなかなら居心地いいほうがいい』異形の地で演歌を歌いながら言ったあの人。

雷三に会いたい。

「ここにいたら自由だ」そう言って星に留まった人。

雷三に会いたい。

ああ、雷三、雷三は帰れる!

故郷へ!

檻から放たれて!




見渡す限りの草原。

切り立った山にところどころひょろりと樹が立っている。

羊の群れだ。

雷三は鞭をふるい指笛を吹き羊の群れを追いたてる。そばには彼の幼い妹がつきまとう。雷三は、いやiyun o`n beshinchi sanaは妹の頭をなで、肩を抱く。

iyun o`n beshinchi sanaが見つめるのは、ただ向かう先、切り立った山の頂だけ。彼は過去のことなど忘れてしまう。


絢香のことなど忘れてしまう。

絢香は涙でグシャグシャになって目覚める。

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