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今日のおはなし  作者: 溝口智子
金の糸 15
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金の糸 77

森の中での警察の捜査は夜までかかっても終わらなかった。

途中、何度か警官がハンナに質問を投げかけ、ハンナが答えることがあった。警官は絢香と雷三にも何かを尋ねたが、二人には言葉がさっぱりわからない。


「ジャパニーズ」


絢香はそれだけ答えると、雷三の肩に身を預けうとうとと目を瞑った。




黒い生き物だ。

しゅーしゅーと息を吐きながらとぐろを巻く。異形がその生き物に丸い筐体を被せ三本の足をつける。

生き物はしゅーしゅーという息を激しくし、その息で筐体は宙に浮いた。

空飛ぶ船は宙に浮かんだかと思うと急降下した。

地面には金の糸に巻かれた異形たち。空飛ぶ船は異形に飛びかかり踏み潰す。

また宙に浮かび飛び下りる。下にはあの星にいたシンデレラ、継母、少年、エリー。みんなまとめてぺしゃんこ。

譲二、ミドリ、村のみんな目掛けて乗り物は急降下する。

操縦席には絢香。残忍な顔で船を操り、誰も彼もを踏み潰そうとする。

急降下する。



「やめてー!」



自分の叫びで絢香は目覚めた。絢香を膝に抱き、雷三は眠ったままぴくりとも動かない。

絢香はがばっと起き上がると雷三の鼻先に指を近づけた。確かな呼吸を感じた。ほっとして手を離す。


広場には投光器が置かれ、真昼のように明るかった。絢香は空を見上げてみたが、明るすぎて星が見えない。


警官たちは異形を縛る金の糸をはずそうと躍起になっていたが、金の糸はびくともしない。


絢香は立ち上がり、おずおずと警官たちに近づいた。


「あのぉ、金の糸は異形にしかほどけないんですよ……」


そっと語りかけてみるが、警官たちは肩をすくめるだけだ。


「あの生き物の手であればほどけるのね?」


突然、後ろからかけられた声に驚き振り向くと、ピンストライプのスーツに細い銀縁の眼鏡をかけた女性が腕組みして立っていた。

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